【2007/10/25 経済学部講演会の模様】

イギリス会計基準設定体制と
自主規制方式

齊野 純子
(流通科学大学准教授)

   本報告は,イギリスにおける会計基準設定体制の変遷(1970年代〜2000年代)を概観し,その過程において,「自主規制」(self-regulation)が如何に維持されてきたかを明らかにすることを目的としたものである。すなわち,イギリス会計制度のcoreを明らかにし,近年の会計基準設定アプローチをめぐる論点のひとつである原則主義(principles-based approach)と細則主義(ruled-based approach)の問題に対する示唆を導き出そうとしている。
 ある会計プロフェションが会計基準の規定からの離脱が妥当であると判断したとしても,その規定が他の会計プロフェッションや同業種の経営者の間で一般に認められた会計原則として浸透している場合,self-regulationの精神に基づく専門的判断の行使が制約されることになる。氏は,かかる状況をself-regulationの危機ととらえる。かかる危機の背景には,1986年のビッグバン政策による証券市場の活性化,監査業務の構造変化(チームワーク化,マニュアル化),creative accountingによる問題の深刻化などがあるという。
 このようなself-regulationの危機に対して,法規制主義(legalistic view)が台頭し,creative accountingを惹起した従来の会計からの転換が進み,概念フレームワークが開発され,会計基準設定体制の改革(国家(法)の介入を制限)がおこなわれるといった一連の対策が講じられる。その結果として,会計基準設定の改革に対して,会計プロフェッションのイニシャティヴが維持されているという。
 報告の中および後で,self-regulationの意味や真実かつ公正な概観の解釈をめぐって多くの質問が出され,活発な討論がおこなわれた。