【2007/9/10 経済学部講演会の模様】

公正価値会計の動向とその課題 ―金融商品の会計を中心として―

草野 真樹
    (大阪経済大学准教授)

   近年の公正価値会計の浸透は勢いを増し,歴史的原価主義会計の重要性は次第に低下しているような感がある。そこで本報告は,公正価値会計の動向と論点について考察したものである。
 まず公正価値会計の台頭の背景について論じられ,その要素として,会計基準の設定方法の変化,会計観(利益観)の変化,経済環境の変化,会計不正への対応といった点が指摘された。次いで,国際会計基準第39号『金融商品:認識と測定』の形成・改定過程に注目することによって,近年の公正価値会計の動向が説明された。その特徴をまとめると,金融商品の全部公正価値会計が指向されたが,現在では,混合属性会計にとどまっていること,米国でも国際会計基準審議会とのコンバージェンスの一環で,公正価値オプションが導入されたこと,そして国際会計基準審議会とアメリカ財務会計基準審議会は,長期的な目標として,金融商品の全部公正価値会計を掲げ,現在,審議を進めていることという3点になる。
 さらに公正価値会計を巡る様々な論点が紹介され,なかでも負債の公正価値測定の重要な論点として初日の損益の問題および信用状態の変化の問題について論じられた。そのなかで,負債の公正価値測定の問題は,会計基準の国際的なコンバージェンスのなかで議論されている概念フレームワーク,収益認識,業績報告などの多様な論点と関わる近年の会計問題のなかでももっとも将来性のあるテーマであることを指摘された。