【2007/11/30 経済学部講演会の模様】

六ヶ所村ラプソディー

鎌仲 ひとみ
    (映画監督)

   今回の講演会は、ドキュメンタリー映画「六ヶ所村ラプソディー」を製作した鎌仲ひとみ監督をお招きして行われた。ドキュメンタリー映画を上映して、その後に監督など製作に関係した方々のお話を聞くという形式の講演会は、ここ3年ほど継続して行われ、定期化してきている。今回も、講演会に先立ち、滋賀大学彦根地区生活協同組合の提供で、昼過ぎから上映会を2度行った。今年は、託児を用意したために、学外から子育て世代の女性が多数参加したことが特徴的だった。
  さて、「六ヶ所村ラプソディー」は、核燃料再処理工場を受け入れた青森県六ヶ所村周辺を舞台とし、そこに生きる人々を追ったドキュメンタリー映画である。六ヶ所村は従来から雇用問題が深刻で、再処理工場は職を失った漁師などの再就職先となっている。また、工場が生み出すビジネスを当てにして、地元のみならず他の地域から移り住む人もいる。しかしながら一方で、この地域は豊かな農業地帯であり、古くから農業を営む人々も少なくない。工場からは放射能が排出されるため、この地域の農家、特に有機や無農薬で作物を作ってきた農家は、作物を買ってもらえないというようなマイナスの影響を受け始めている。もちろん、健康への不安も心配である。
  賛成か、反対かという、どちらか一辺倒の視点ではなく、この地域の抱えている問題、それぞれの住民の思いを描くことによって、このドキュメントは「人類史に普遍的なストーリー」(坂本龍一氏 )となった。鎌仲氏の講演の後に、討論に加わった只友景士・准教授(滋賀大学)は、そのことを自らの沖縄研究と関連付けて議論した。
  講演の中で鎌仲氏は、再処理工場に感心を持つきっかけとなったのはイラクなどでも使用されている劣化ウラン弾が原子力産業から生み出されていると気がついたことであったことや、いかにしてドキュメントの中に賛成派を登場させることができたのか、などのエピソードを紹介してくれた。
  また、自ら取材拒否にあった体験などを通じて、マスメディアのありようについても問題提起をした。広告費という巨大な「えさ」によって、報道は萎縮し、ついには企業側の視点から物を描くようになる。記者クラブと行政との癒着は、フリーのジャーナリストを排除し、事実を覆い隠すように作用する。そして多くの国民は真実を知らされないままに、放置される。
  しかし、「知らされない」とマスメディアを罵っているばかりでは、われわれはいつまでも「知らされる」という受身の存在でしかない。鎌仲氏が、大きな映画館ではなく、あえて小さな自主上映会が数多く開かれるようにこだわっているのは、われわれが「知らされる」存在から、主体的に「知る」存在へと変わることを期待しているのであろうと理解した。(経済学部准教授 中野桂)