【12/8 経済学部ワークショップの模様】

―Asian Studies Workshop 弐―
「小樽商科大学百年史編纂室の活動内容等について」

   平井 孝典 氏(小樽商科大学百年史編纂室)

 小樽商科大学には以前に一度行ったことがあり、その際に学内にあった史料展示室も見学した。同室には旧校舎のジオラマや、伊藤整・小林多喜二の著作なども展示されていて、かなり見応えがあったと記憶している。その後、滋賀大に赴任していささかなりとも大学史資料に関わるようになり、他大学のアーカイヴズも見学したが、同じ旧高等商業学校系の大学ということもあって、小樽商大とその大学史資料は常に念頭にある存在であった。
 このような理由もあり、今回のワークショップで小樽商大百年史編纂室が設置に至った経緯や、その活動実態について詳しい説明を聞くことが出来たのは、極めて意義ある体験であった。平井氏のご報告は、アーキュビストとして現場で活躍する人ならではの具体的な示唆に満ちた内容であったが、個人的には情報公開法と大学史資料との関係についての議論をとりわけ興味深く聞いた。
 例えば、日本において現在施行されている情報公開法は英・米など英語圏の国のものがモデルとなっているのであるが、それら国々では保存年限を満了した行政文書はアーカイヴズへ移管され、一律に保存・公開の対象とされることが前提となっている。しかし、日本では国立公文書館法における公文書館への文書の移管規定は、強制力を伴わない「任意規定」に留まるものである。また、地方自治体などにあってはそもそもアーカイヴズ自体が設置されていないところも多い。こうした理由から、日本では情報公開法施行以後、むしろ公文書館に移管される文書が減少したり、保存年限を満了した文書の機械的な廃棄が進行するといった現象が生じているのである。
 そして平井氏は、こうした現象が最も顕著に見られるのが、実は大学であると指摘する。近年は何らかの資料保存機関を有する大学も増加してきており、京都大学大学文書館や東北大学史料館など優れたアーカイヴズも存在するが、こうした機関を持たない大学も依然として多い。そして、こうした大学にあっては、歴史的価値や将来の大学運営上の価値などを斟酌することなく、大量の文書の廃棄が日々進行してしまっているのである。ちなみに滋賀大学経済学部は、その典型的なケースに該当する。
 小樽商大百年史資料室の場合、主な設置目的は大学史編纂であるが、すでに昨年から保存年限を満了した法人文書の受入れを開始しており、さらにその発足にあたっては、学長などが編纂事業終了後にアーカイヴズ組織を再発足させると表明しているとのことである。これまでの他大学のケースでは、大学史編纂事業にあたって多くの資料を収集したとしても、事業の終了後にはそれらを散逸あるいは死蔵してしまうことが多く(『滋賀大学史』もこのケース)、あらかじめ資料の保存・公開の方針を定めておくことは重要である。
 滋賀大において大学史資料が置かれている現状の貧困さを顧みつつ、それではより良い大学史資料の保存・公開の実現はいかにして可能となるか――ご報告を聞きながら、そうしたことばかりを考えさせられてしまった。参加者5名。(滋賀大学経済学部助教授 青柳周一)