【3/10 経済学部ワークショップの模様】

―Asian Studies Workshop 弐―
「日本統治時代の台湾におけるアジア調査―大正期を中心に―」

横井 香織 氏

 「台北高等商業学校卒業生の動向に関する一考察」(『東洋史訪』8,2002.3)や「日本統治期の台湾における高等商業教育」(『現代台湾研究』23,2002.7)などの多数の論考を発表している横井香織の今回の報告は、「日本統治時代の台湾におけるアジア調査−大正南進期を中心に」と題された。横井の関心は、「近代日本が、アジア地域をどのように調査・研究し、アジアをどう認識していたのかについて、台湾総督府を中心に展開された調査活動に着目してその実態を解明し、歴史的意義を検証すること」にある。近年、「戦後のアジア研究・フィールド調査の源流を探る」とうたった『岩波講座「帝国」日本の学知』第6巻「地域研究としてのアジア」(岩波書店、2006年)が刊行され、そこに収録された松重充浩の「戦前・戦中期高等商業学校のアジア調査」がおもに、山口高等商業学校(現在の山口大学経済学部の母体)をとりあげて論じたように、戦前のアジア認識やアジア調査・研究をめぐって、高等商業学校が重要なフィールドとして提起されている。戦前の高等商業学校は、「内地」だけでなく、朝鮮や台湾などにもあった。横井は、ほとんど取り上げられてこなかった「外地」である台湾の高等商業学校の研究を開拓したひとりである。
 報告では、台湾銀行、南洋協会台湾支部、台北高等商業学校の順で、台湾の諸機関におけるアジア調査について、ついで台湾総督府の「南支南洋調査」について述べられた。台北高等商業学校の卒業生が台湾総督府や台湾銀行に就職し、総督府関係者が台北高商の校長や教官に就任するなど、台湾銀行(調査課を設置)、台北高等商業学校(南支南洋経済研究会の活動や、海外修学旅行の実施)、南洋協会台湾支部、台湾総督府(官房調査課を置く)はそれぞれに人脈と交流をつくりあげ、それらをとおして、官民両機関の調査実績が台湾総督府に蓄積されてゆく構造があった、と横井は論述した。
 横井の報告は、おもに「南支南洋」というアジアにむけられた帝国日本の学知を、台湾における人材育成と人脈、資料(報告書など)の作成と蓄積においてとらえたといえよう。こうした観点での論述は、「内地」の高等商業学校においても待たれるところであるし、また、報告後の論議でも示されたように、台湾総督府に集積した調査のその内容の分析も、これからの課題となる。出席者7名。(経済学部助教授 阿部安成)