【12/2 経済学部ワークショップの模様】

―Asian Studies Workshop 壱―
"Normalization of Japan's Armed Forces:Research and Findings"

 Prof. Eyal Ben-Ari( Director , Harry S. Truman Research Institute for the Advanced of Peace,The Hebrew University of Jerusalem)

 ベン・アリさんは1980年代からイスラエル軍についての研究を行い、また8年ほど前から日本社会における自衛隊についての研究を始められました。多くの人が、自衛隊は将来旧軍のようになるのではないかと懸念するなかで、自衛隊自身が一般の人にどう受け入れてもらおうとしているのか、この点について、"Active Agent"としての自衛隊がその存在をどう示そうとしているのかという側面から明らかにするのが今回の発表の目的でした。以下にその概要を記します。
 第二次世界大戦というものが日本に残した大きな影響といえば、例えば、戦争が持つ征服や破壊という性質から生じるネガティブな印象や、日本に原爆を落とされたという被害者としての意識、憲法第九条の存在等であった。世界規模で1950年代以降現れた反核主義の潮流は、日本にも影響を及ぼした。しかし、その一方で日本社会は経済発展を遂げ、同時にmilitary diplomacyも展開してきた。陸・海・空を備えた自衛隊組織だけでなく、それに関連する膨大な軍事産業をも考慮に入れるならば、自衛隊は軍隊であるということができる。しかし、これまで、自衛隊は憲法上の制約等諸般の事情から、violenceとの関係性をあいまいにする努力をしてきたということができる。つまり、violenceこそが軍の本質であるにも関わらず、これをぼやかすことが自衛隊にとっての中心課題であるというのは、自衛隊のアイデンティティをも問い直す問題となっている。その具体的例を挙げるならば、自衛隊内部の人と外部の人に対する言葉の使い分けがある。国外の軍関係者に向けて、ある集団をInfantry(歩兵隊)であると説明する一方で、日本国内の一般の人向けにはそれが普通科であると語られている。あるいは自衛官同士でも、士官から曹に対して指示をする場合に、言葉の最後に「お願いします」を付けている。これはアメリカ軍やイギリス軍ではありえないことだが、そういう姿勢からも「言葉の民間化」が起こっていると言える。言語だけでなく、普段の行動や広報活動等の例を見ても、押しなべてソフトな印象作りをしている。特に近年は災害救援活動や国連平和維持軍参加などにより、民間に役立つ軍人のイメージは一般の間に定着しつつある。現在の自衛隊のモデルは西欧にあり、旧軍に戻るという可能性はないと言えるが、今後注目されるのは、自衛隊が国益との関係性をますます目に見える形で見せてくるようになるであろうという点である。(以上)当日の参加者は発表者を含め8名。熱心な質疑応答が行われました。(福浦厚子)